これならわかる~酸化数の求め方を攻略しよう~

はじめに

酸化数も、化学を学習する上での難所の一つです。

酸化数の求め方がわからないと、この先で学習する
酸化剤や還元剤、半反応式、酸化還元滴定の計算問題なども理解できません。

酸化数は、酸化還元反応の単元ではとても重要な存在ですが、
苦手としている方も多いのではないのでしょうか。

そこで、酸化数を求めるためのポイントをまとめてみたいと思います。
これがわかれば、確実に酸化数を求められるようになります。

酸化数の求め方

酸化数は次のルール1とルール2を使って求めます。

<酸化数の求め方 ルール>
・ルール1
(1)単体の原子の酸化数は
(2)単原子イオンの酸化数は、イオンの価数に等しい。
(3)化合物を構成する原子の酸化数の総和は0
(4)多原子イオンでは、構成する原子の酸化数の総和は、イオンの価数に等しい。
・ルール2
(1)化合物中のアルカリ金属(Na、Kなど)の酸化数は+1
(2)化合物中の2族元素(Mg、Ca、Baなど)の酸化数は+2
(3)化合物中の水素原子の酸化数は+1
 *例外:金属の水素化物の場合は、−1。
   (NaH:水素化物ナトリウム、CaH2:水素化物カルシウムなど)
(4)化合物中の酸素原子の酸化数は−2
 *例外:H2O2:過酸化水素のような過酸化物の場合は、−1。

大まかな流れとして、
まず、ルール1で、(1)単体、(2)単原子イオン、(3)化合物、(4)多原子イオンのどれに当てはまるのかを判断します。
その後、ルール2の(1)~(4)を使って各原子の酸化数を求めます。

例題を見ながら、酸化数の求め方を見ていきましょう。

酸化数の求め方がよくわからない、という方は、
先ほどまとめたルール1とルール2を見ながら、
(1)~(4)のどれを使っているのかを確認しながら読み進めていきましょう。

どのようにルールを使えばよいのかがわかってくれば、酸化数も怖くありません。

例題

単体

<例題1>下線を引いた原子の酸化数を求めなさい。

(1)K (2)N2 (3)S8

ルール1(1)より、
単体(1種類の元素のみからなる物質)の酸化数は0ですので、
求める酸化数は、すべて0となります。

答:(1)~(3)すべて0

単原子イオン

<例題2>下線を引いた原子の酸化数を求めなさい。

(1)Na+ (2)Fe3+ (3)Cl (4)S2-

ルール1(2)より、
単原子イオン(1個の原子からなるイオン)の酸化数は、イオンの価数に等しくなります。
イオンの価数は、イオン式の右上に着目します。

(1)Na+では、右上の部分が「+」となっているので、1価の陽イオンです。
このため、酸化数は+1となります。

(2)Fe3+では、右上の部分が「+3」となっているので、
酸化数は+3となります。

(3)Clでは、右上の部分が「-」となっているので、1価の陰イオンです。
このため、酸化数は-1となります。

(4)S2-では、右上の部分が「-2」となっているので、
酸化数は-2となります。

答:(1)+1 (2)+3 (3)-1 (4)-2

化合物

<例題3>下線を引いた原子の酸化数を求めなさい。

(1)H2O2 (2)H2S (3)KMnO4 (4)H2C2O4

ここから難易度が高くなります。

求め方は次のようになります。
<例題3>がわかるようになる頃には、酸化数に対する苦手意識も薄れてくるはずです。

化合物(2種類以上の元素からなる物質)の場合、
ルール1(3)を使います。

もし、下線を引いた原子の酸化数がルール2の(1)~(4)により求められない場合は、
それ以外の原子の酸化数をルール2の(1)~(4)から求め、
ルール1(3) 化合物を構成する原子の酸化数の総和は0であることより、
下線部の原子の酸化数を求めます。


では、例題を見ていきましょう。

(1)ルール2(4)の例外を使います。
(過酸化水素H2O2)は過酸化物なので、O原子の酸化数は-1となります。(-2ではないので要注意
ちなみに、H原子の酸化数は、ルール2(3)より+1となります。
構成する原子の酸化数の総和は、(+1)×2+(-1)×2=0となるため、
ルール1(3)も成り立ちます。

(2)S原子の酸化数をルール2により直接求められないので、H原子の酸化数からS原子の酸化数を求めます。
H原子の酸化数は、ルール2(3)より+1
H2S中にH原子は2個あるので、
S原子の酸化数は-2

(3)Mn原子の酸化数をルール2により直接求められないので、K原子とO原子の酸化数からMn原子の酸化数を求めます。
Kはアルカリ金属なので、K原子の酸化数はルール2(1)より+1
O原子の酸化数は、ルール2(4)より-2
ルール1(3)より、化合物を構成する原子の酸化数の総和は0なので、
KMnO4におけるMn原子の酸化数をxとすると、
(+1)+x+(-2)×4=0
x=+7
よって、Mn原子の酸化数は+7

(4)C原子の酸化数をルール2により直接求められないので、H原子とO原子の酸化数からC原子の酸化数を求めます。
H原子の酸化数は、ルール2(3)より+1
O原子の酸化数は、ルール2(4)より-2
ルール1(3)より、化合物を構成する原子の酸化数の総和は0なので、
H2C2O4におけるC原子の酸化数をxとすると、
(+1)×2+2x+(-2)×4=0
x=+3
よって、C原子の酸化数は+3

答:(1)-1 (2)-2 (3)+7 (4)+3

多原子イオン

<例題4>下線を引いた原子の酸化数を求めなさい。

(1)OH (2)NH4+ (3)SO42- (4)Cr2O72-

ルール1(4)より、
多原子イオン(2個以上の原子団からなるイオン)では、構成する原子の酸化数の総和は、イオンの価数に等しくなります。
酸化数の求め方は<例題3>と同様ですが、構成する原子の酸化数の総和が「イオンの価数」になることに注意してください。

(1)ルール2(4)により求めることができます。
O原子の酸化数は-1となります。
ちなみに、H原子の酸化数はルール2(3)より+1であり、
OHを構成する原子の酸化数の総和は、(-2)+(+1)=-1となるため、
ルール1(4)も成り立ちます。

(2)N原子の酸化数をルール2により直接求められないので、H原子の酸化数からN原子の酸化数を求めます。
H原子の酸化数は、ルール2(3)より+1
NH4+1価の陽イオンなので、
ルール1(4)より、NH4+を構成する原子の酸化数の総和は+1
NH4+中にはH原子は4個あるので、
N原子の酸化数をxとすると、
x+(+1)×4=+1
x=-3
よって、N原子の酸化数は-3

(3)S原子の酸化数をルール2により直接求められないので、O原子の酸化数からS原子の酸化数を求めます。
O原子の酸化数は、ルール2(4)より-2
ルール1(4)より、SO42-を構成する原子の酸化数の総和は-2
SO42-中にはO原子は4個あるので、
S原子の酸化数をxとすると、
x+(-2)×4=-2
x=+6
よって、S原子の酸化数は+6

(4)Cr原子の酸化数をルール2により直接求められないので、O原子の酸化数からCr原子の酸化数を求めます。
O原子の酸化数は、ルール2(4)より-2
Cr2O72-中にはO原子は7個あるので、
Cr原子の酸化数をxとすると、
2x+(-2)×7=-2
x=+6
よって、Cr原子の酸化数は+6

答:(1)-1 (2)-3 (3)+6 (4)+6

まとめ

ここでは酸化数の求め方をルール1とルール2に分け、まとめてみました。

先ほどの<例題3>や<例題4>で、どのようにルールを使っているかがわかるようになると、
酸化数を自分の力で求められるようになります。

ルール1とルール2が頭に入ればばっちりです。
ぜひ酸化数を攻略できるようにしましょう。

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